数学的な見方や考え方と学習意欲を育てる数学的活動の指導と評価の在り方について-「図形」領域における論証指導を通して-

長谷川 正克

本研究では,中学校数学科第2学年の論証指導において,数学的活動の指導の工夫,評価基準の生徒への提示,それに基づく生徒の自己評価,それを活用する指導を行った。
その結果,これらの手立てが数学的な見方や考え方と学習意欲を育てることに有効であることが明らかになった。特に生徒の自己評価は,学習状況の把握だけでなく,個別指導や学習意欲の向上に大いに有用であることが分かった。さらに本研究対象の生徒は,その個別指導の視点として,情意的な側面の支援より学習内容等に関する支援・指導を求める傾向にあることも分かった。
<キーワード>  数学的な見方や考え方,学習意欲,数学的活動,自己評価用評価基準,自己評価,
自己評価を活用した指導

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高等学校芸術科における「芸術を愛好する心情を育て,豊かな情操を養う」ための教材の工夫
-「漢字仮名交じりの書」を通して-

水上 雅仁

近年の教育改革の大きな流れは,「生きる力」というキーワードによって語ることができる。
「豊かな人間性の育成」「自ら学び,自ら考える力の育成」「基礎・基本の定着」などなど,これらは, 「生きる力」の重要な資質や能力である。
その大きなテーマに向けて,高等学校芸術科書道ではどのようにかかわっていけばよいのか。生徒一人一人の自主性を伸展し,豊かな情操を養うにはどのような授業が考えられるのか。一つのアプローチとして教材の工夫を試みた。
<キーワード> 漢字仮名交じりの書,豊かな情操,教材の工夫

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中学校国語科における伝え合う力を育てる学習活動の在り方
-「話すこと・聞くこと」領域における身に付けたい力の確かな育成を目指す指導の手立ての研究 -

津田 由起枝

中学校国語科「話すこと・聞くこと」領域において,身に付けたい力の確かな育成を図るために,目標や身に付けたい力の明確化,必然性のある言語活動の設定,学習の振り返りとして有効な評価を一連の学習展開の中で機能させる授業実践を行った。その結果,「話すこと」「聞くこと」「話し合うこと」のそれぞれについて意識の高揚が図られ,第3学年時を中心に実際の話合いの場で効果的に活用する姿が見られるようになった。特に言語内容面の意識の高揚および能力の向上が顕著であった。
<キーワード> 目標や身に付けたい力の明確化,必然性のある言語活動,有効な評価

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学級活動における望ましい人間関係の確立を目指した研究
-グループワークの実践と調査を通して -

清水 利幸

本研究は,中学校の学級活動において,グループワーク(ソーシャルスキルトレーニング,アサーショントレーニング,構成的グループエンカウンター)を取り入れた授業実践を行うことにより,望ましい人間関係の確立を目指したものである。「ソーシャルスキル尺度」を用いて学級集団の状態を授業実践の前後で測定・比較し,その測定結果を基にグループワークの内容を修正・実践していく中で,生徒の社会性のスキルの高まりが見られた。グループワークを取り入れた授業が,望ましい人間関係の確立に関して有効であることが明らかになった。
<キーワード> 学級活動,望ましい人間関係,ソーシャルスキル尺度,グループワーク

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自己学習力を高める博物館における学習指導
-高等学校日本史の学習形態の工夫-

宇佐美 雅樹

本研究は,高等学校日本史の課題学習を展開するなかで,生徒が博物館において主体的に学ぶ力を身に付けるための,館における教員の学習指導の在り方,生徒の学習活動の在り方,課題学習を深化させるためのワークシート活用の方法等について探ろうとするものである。
生徒が博物館における課題学習(以下,「博物館学習」と略記)を通して主体的に学ぶ力が育成されたかどうか,アンケートのほか,ワークシート,レポートの分析を通して検証を試みた。
博物館学習やその後に行うレポート作成など,一連の学習の前後に行ったアンケートの結果から,博物館を利用した課題学習は,生徒の日本史を学ぶ力に良い影響を与えることが明らかになった。また,一連の学習後において大部分の生徒に自己学習力の向上が認められた。これらのことから,課題学習における適切な「ワークシート」の活用,学習形態の工夫などが自己学習力の向上に有効であることが確認された。
<キーワード>  高等学校日本史,博物館における学習指導,課題学習,ワークシート,自己学習力

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空気中の水蒸気を観察・実験するための指導について
-雪の結晶づくりを通して-

藤井 芳文

本研究は,雪の結晶づくりを通して,自然現象を身近に感じ,空気中の目に見えない水蒸気の存在を実感するための学習指導方法を工夫・検討したものである。「平松式ペットボトル人工雪発生装置」を利用して,雪の結晶を教室内で児童につくらせた。その結果,学ぶ意欲を高め,空気中の目に見えない水蒸気に対する理解を深めさせ,同時に自然現象に対する興味関心を持たせることができた。
<キーワード>  雪の結晶づくり,空気中の目に見えない水蒸気,自然現象に対する興味関心

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校務処理の効率化をめざした情報処理システムの開発
-陸上記録会・通知簿・アンケート処理システムの開発と活用を通して-

酒井 光洋,川上 純朗,千葉 晴信

手作業で行われている様々な校務処理に対して,基本的な操作だけで作業を行えるような情報処理システムを開発し,それを活用することによる校務処理の効率化について研究を進めた。陸上記録会・通知簿・アンケート処理といった校務処理に対して,開発した情報処理システムを活用する前と後の効率具合を比較し,利用者の意見などを通して改善を加えた。この結果,処理システムを長期的に活用し続けるにはいくつかの課題が残ったが,現時点では一定の効率化が図れた。
<キーワード>  校務処理,情報処理システム,陸上記録会,通知簿,アンケート

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教育研究所Webサイトの有効活用策を探る
-教育情報の提供を効率的に行うために-

伊東 輝晃

福井県教育研究所は「福井県の教育の充実と振興に寄与するために,関係教育機関と連携し」,「教育情報の収集・整理および提供により,教職員の研究・研修の推進を図る」ことを,運営方針の一つに掲げて,これまで広報誌発行と併せてWebサイト運営を行い,情報を提供してきた。この利便性をさらに高めるために,平成17年4月にWebサイトを刷新(リニューアル)した。
Webサイト刷新の狙いと意義を考察し,これまでを振り返って有効性を検証した。また,遵守義務のある「福井県ウェブページ作成ガイドライン」に則ってアクセシビリティ(情報の得やすさ)に配慮したサイトをどう構築するか,また,個人情報や著作権を保護しつつWeb上で有用な教育情報をどう提供するかを探ることで,今後の取り組むべき課題が明らかとなってきた。
<キーワード>  Webサイト運営,広報活動,情報収集,情報提供,アクセシビリティ

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個別指導や学習指導の改善に向けて
-「学習や生活に関する調査」結果の考察から-

大嶋 政幸

福井県学力調査は,抽出した児童生徒のデータを基礎資料とし,県内の児童生徒の学習達成状況を把握することにより,個別指導や学習指導の改善に役立てる資料を得ることを目的としている。第51次福井県学力調査からは,「学習や生活に関する調査」として各教科の実施時間とは別にアンケートがとられるようになった。今年度が3年目である。そこで,「学習や生活に関する調査」結果から福井県の子供の学習や生活に関する意識と学力との関連を探った。その結果,学習に関する意識と学力との関係は校種や教科により差があることや,家庭での生活が学力に関係していることが明らかになった。
<キーワード>  学習や生活に関する調査,3か年の推移,正答率との関係,学習への意識,
家庭での生活,個別指導

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学校経営能力の向上を図るための調査研究
-リーダーシップ研修講座改善のための調査を通して-

脇田 典子

新任管理職(校長・教頭)が,よりよい学校経営を行っていくための支援となる研修講座を計画するために調査研究を行った。その結果,新任管理職はどの設問も肯定的な回答を8~9割が選択していることや,学校経営能力向上のために研修内容を充実した方がよいと思われるところがあることが分かった。平成18年度のリーダーシップ研修講座(新任管理職研修講座)の内容には,組織マネジメントやコーチングによる人材育成を取り上げ充実させていくことや,ニーズに合わせた選択研修(教職員のメンタルヘルスケア・シラバス・特別支援教育等)を実施していくことが望ましい。
<キーワード>  学校経営,組織マネジメント,組織,人材育成,管理職,教職員

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教員の資質能力を高める研修の在り方
-研修講座の充実を通して-

大崎 ふみ代

研修講座の内容や体制の充実を図ることが,県内教員の資質能力向上に直結するものと考え,講座受講者にアンケート調査を実施することにより,受講に関する課題や研修ニーズ等を探った。その結果,研修ニーズとしては,教科指導が最も多いが,コンピュータや教育相談・カウンセリング等の今日的課題に対するニーズも多いこと,管理職として各年代に受講してほしいと希望する研修と各年代の教員のニーズとは若干ずれがあること等が把握できた。
<キーワード>  教員の資質能力向上,研修講座,校外研修,アンケート,研修ニーズ

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高等学校の教育相談体制の現状と課題
-教育相談機能の向上のため教育相談担当者への行政支援を検討する-

小島 雅彦

高校では不登校になった場合,その生徒が留年あるいは中途退学となる場合が多い。さらにそれがその後の引きこもりにつながるケースもあり,教育相談においては小中学校とは違った対応が必要である。また精神的な病気を発症しがちな時期でもあり,教育相談担当者にはより専門的な知識技能が求められるとともに,スクールカウンセラーなどの専門家の支援が必要である。しかし,現状ではそうした知識技能を習得する研修機会が少なく,外部からの支援体制も不十分である。そこで教育研究所が中心となって,研修講座の充実をはじめ,スーパーバイザーを招いての事例研究会や連絡協議会を開催するなど,施策としての行政支援を充実させていく必要がある。
<キーワード>  高校教育相談,中途退学,引きこもり,教育相談研修,行政支援

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特別支援教育に関する教員の意識と学校の取組について
-軽度発達障害関係の研修講座受講者に対する調査を通して-

田中 ますみ

「特殊教育」から「特別支援教育」へという転換期において,学校では,軽度発達障害に対する理解と通常学級における学級経営や教科指導法の改善,校内支援体制の確立が急務となっている。本研究では平成16・17年度に軽度発達障害関係の研修講座を受講した教員を対象に調査を行い,軽度発達障害に関する教員の意識と特別支援教育に対する学校の取組を明らかにした。その結果,教員にとって気掛かりな状況は,集団活動をさせたい場面で対象児が不適応行動をとることであり,個人的な特性の問題に関してはそれほど困っていないことが分かった。そして,特に授業時間における具体的・実際的対応を求めて研修を重ねていることが明らかになった。また校内での支援体制は整備されつつあるが,専門家や外部機関との連携はまだ不十分と感じていて,教員は専門家による指導助言を求めていることが明らかになった。
<キーワード>  特別支援教育,軽度発達障害,校内支援体制,気掛かりな子供

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不登校児童生徒の理解と援助に関する研究
-フレンド学級活動を通しての意欲の高まり-

朝倉 恭子

不登校に至るには様々な要因が挙げられるが,学校生活における傷つき体験を持つ児童生徒は多い。中学1年生のA男は給食での失敗経験が学校生活における傷つき体験となり,学校での居場所を失い,自宅に引きこもることが多くなった。そこで学校の紹介で来所相談を始めた。A男は外の世界に出ることを極端に怖がっていたので,スタッフはA男の言動を肯定的に受け止め,フレンド学級を安心できる場所とすることを第一と考えた。その上で異年齢の小集団であるフレンド学級内で,人間関係を広げることを目標とした。具体的にはA男に寄り添い,意欲や成功体験の場面を強化することでA男の自信回復と活動意欲の向上をねらった。その結果,学習や物づくり,運動にも参加するようになった。登校に対するA男の気持ちも高まり,無理をせず自分のペースで相談室登校を続ける状態となった。このA男の変化は心理アセスメントでも確認できた。
<キーワード>  不登校児童生徒,自信の回復,活動意欲,対人関係能力,心理アセスメント