効果的な「情報モラル」についての指導および研修の在り方を探る-実態に即した指導資料・研修資料の作成を通して-

屋木洋一 酒井光洋 中川和彦 川上千鶴 木下孝治 山下三奈

情報社会の進展により、インターネットは生活の中で欠かせない存在となっている。そのため、情報教育の中で、情報活用の実践力・情報の科学的な理解とともに、子どもたちに情報社会を安全に正しく生きるための考えや態度(情報モラル)を教えることは緊急の課題となっている。
今年度の研究では、情報モラルの指導にどのような指導資料や研修資料が有効かを考え、作成することにした。また、研究の一端を学校訪問研修でも取り入れた。これらは、情報モラル教育を進める上での足がかりとなったと考える。作成した資料を当教育研究所のホームページへも掲載し、更に啓発活動を推進していきたい。
<キーワード>  コンピュータ、インターネット、情報モラル、カリキュラム、研修支援

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学校経営に関する意識調査-新任管理職へのアンケートを通して-

半田 信和

研修講座改善の資料とするために、新任管理職の学校経営に対する意識調査を行った。4回のアンケート調査を通して、新任管理職が勤務校の現状をどうとらえ、どこに重点を置いて学校経営を進めようとしているか知ることができた。調査結果に表れた管理職の課題意識を踏まえ、今後の講座で充実すべき研修テーマとして考えられるのは「組織マネジメント」「人材育成」「教師力」「学校評価」「不易と流行」の5つである。
<キーワード>  学校経営、課題意識、研修テーマ

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教職員の研修の在り方についての調査研究-教職員の資質能力向上のために-

湯島 雅俊

当教育研究所で計画・運営している教職員研修講座は、県内の教職員の自主研修を支える重要な役割を担っている。教職員の資質の向上、それを通して現場の様々な課題に集団で対応していく力をつけてもらうことを最大の目標としている。
本研究では、教職員の研修ニーズを調査し、より強く教職員をサポートできる研修講座の在り方を探り、次年度の研修講座設定の資料作成を目指す。更に、教職員の研修に対する意識を調査することにより、研修講座の有効性をより高める方法について考察し、福井県全体の教育力を伸ばすための様々な施策への一助とする。
<キーワード>  教職員研修、研修講座、研究、修養、資質能力向上

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適応指導教室における連携について-児童生徒の変容を促す効果的な連携について-

岩佐 明晴

本研究は平成17年、18年に福井県内適応指導教室に対して、適応指導教室と各機関との連携、適応指導教室活動の成果と課題および、児童生徒の支援についての調査を行い、適応指導教室と関係機関との連携の状況や活動上の課題、また支援による児童生徒の変容について検討した。
その結果、適応指導教室での不登校児童生徒の支援で、学校復帰等の行動の変容について、有効な連携の取組みが報告された。特に、適応指導教室と学校や保護者および関係機関との連携で児童生徒の変容に効果があった具体的な取組みが報告された。これらの結果から、これからの不登校児童生徒の支援で、適応指導教室と学校、保護者、および関係機関との望ましい連携の在り方について探ることができた。
<キーワード>   適応指導教室、連携、児童生徒の変容、学校復帰

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適応力を高める学校教育相談の在り方-A中学校における課題と模索-

吉川 憲男

中学校の生徒は、2年生の女子を中心に学習や進路、人間関係についての悩みが多い。友人や母親が主な相談相手となるが、すれ違いも少なくない。教師の中には、その不安定な感情を理解しにくく、また時には価値観を権威的に示す人もおり、相談相手として選ばれにくいのが現状である。
この不安定な中学生の心を支えるためには、まず家庭が「安心の場」となっているかどうかの確かめが必要である。次に社会性を身につけさせ、また将来の人間像を示すために、教師がそれぞれの生徒との関係を見直してみる必要がある。更に学校での人間関係が深められるように教師は心配りをしなければならない。
教育相談係は、学級担任やスクールカウンセラーと連携して、生徒がよりよい人間関係を築くための指導計画の作成や実施にあたっての指針を示す役割を担っている。
<キーワード>  人間関係、社会性、教育相談係、スクールカウンセラー

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不登校生徒の学校復帰を目指して-フレンド学級中学生A子への自立支援活動を通して-

森本 次雄

不登校になった子どもたちは、周りの大人たちが、様々な関わりをもつことの意味をどれだけ理解しているのだろうか。個人によって差異はあるだろうが、その対応や支援が重荷になったり、また全く逆効果になる場合もある。だからこそ、不登校に至る真因・誘因をしっかりふまえた上で、様々な視点から支援策を考えなくてはいけないのではないかと考える。
そこで本研究では、フレンド学級に入級している中学生の生徒の変容状況を観察し、その生徒の学校復帰に向けた支援を記録し、分析することにした。その支援及び個別面接が学校復帰を目指した支援として有効であるかを考察する。学校では不登校になった生徒の多くが学校復帰ができていない現状もある。そのため、学校復帰を目指しながらも社会的適応・社会的自立ができるような支援を続けるべきだと考える。
<キーワード>  ソーシャル・スキル、セルフ・コントロール、学校復帰、社会的適応

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不登校児童の学校復帰に向けた援助に関する研究-フレンド学級での活動及び家庭・学校との連携を通して-

馬淵 朋子

当教育研究所にある適応指導教室「フレンド学級」は、子どもの心の居場所を保障しながら、子どもの世界を広げ、集団に適応していく力を育て、最終的には子どもの状況に合わせて学校復帰を目指している。
本研究における小学生のA男は、フレンド学級に入級する約3ヶ月前から全く登校できなくなっていた。家庭環境の変化や兄の不登校の影響など、様々な原因により精神的に不安定になり、家族以外の人間に会うことを怖がっていた。そこで、スタッフはまずA男の言動を肯定的に受け止め、フレンド学級を安心できる場所にしようと考えた。そして、スポーツを得意とするA男に、活躍の場を保障し、認められる体験を増やすことにより、自信回復と活動意欲の向上をねらった。その上で異年齢の小集団であるフレンド学級内で、人間関係を広げることを目標とした。更に、家庭や学校との連携を密にし、A男に寄り添ったかかわりについて共通理解を図りながら援助していった。その結果、学校行事への参加をきっかけに学校復帰を果たした。
<キーワード>  不登校児童、フレンド学級、連携、自信の回復、学校復帰

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不登校生徒の自己肯定感の変容について-自己肯定意識尺度アンケートを実施して-

吉田 修弘

不登校児童生徒は自己肯定感が低く、自分に対して自信を持てないでいることが多い。そこで、一人ひとりの自己肯定感を測定するための自己肯定意識尺度アンケートを作成し、フレンド学級の在籍生徒と通常学級の生徒に実施して比較した。その結果、フレンド学級在籍生徒の自己肯定感は、通常学級の生徒よりも全体的に低いという結果が数値で示された。また、不登校生徒は楽しいと感じる日々をあまり過ごしていないことや、将来に対する希望をなかなか持つことができずにいることも分かった。更に個別的に見た場合、フレンド学級の活動を通して自己肯定感の高まりや自信の回復が見られるときもあったが、外部要因(家庭環境の変化、受験に向けての心理的な影響等)によっても大きく左右されるのではないかと考えられた。しかし全体的に見れば、入級当時よりも心のエネルギーが蓄積されてきている生徒が多いことが分かった。
<キーワード>  自己肯定感、自己肯定意識尺度アンケート、自信の回復、外部要因

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不登校児童生徒への担任教師のかかわりについて-担任教師の不登校に対する捉え方やかかわり方の実態と変容-

島田 美由紀

不登校は依然として深刻な問題である。不登校の要因や背景が多様化・複雑化する状況の中で、教師が学級担任として不登校児童生徒とかかわる機会も多い。担任教師が不登校児童生徒とのかかわりの中で不登校に対する捉え方がどのように変化したか、またどのようなかかわりが不登校児童生徒にとって有効であったかをアンケート調査や面接調査を通して分析し、考察した。
教師は、不登校児童生徒を担任することで、負担感や無力感を抱いていることが多い。しかし、様々なかかわりを通して、それぞれの子どもに合ったかかわり方を見出したり、新たな視点から不登校を捉えるようになったりする。さらに学校の支援体制の問題に気付くこともある。このような経験から教師自身が自信を付けたり、自分自身の心の安定を図る手だてを見つけたりして、教師としての成長にもつながっていることが分かった。
〈キーワード〉  不登校児童生徒、担任教師、かかわり、捉え方

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国際理解の一環としての英語活動へのアプローチ-人・物・心による小学校教員への有機的サポート-

上野 澄子

平成14年から実施となった学習指導要領では、総合的な学習の時間が位置づけられた。その取扱いについて、「各学校においては、……(中略)……例えば国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的課題……(以下略)……」という形で、現段階では学校独自の計画のもとに進められている。
個別に英会話スクールへ通う児童も少なくない。このような中で、英語活動を実施するに当たり、小学校教員の負担は決して軽くはないと予想される。カリキュラム等具体的な手立てがないまま進めているケースもあると考え、本研究に着手した。
<キーワード>  総合的な学習の時間、国際理解、小学校英語活動、カリキュラム

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地学分野等で生徒の理解の一助となる教材開発-自作教材の製作と授業実践-教員の資質能力を高める研修の在り方

佐島 誠一

高校地学や理科総合分野には、学習活動を進める上で、理解させるのに難しい領域が存在する。その領域について教材の有無を調査し、その中から、「楕円描画器」、「冷たい雨説明モデル」、「火星の逆行現象説明モデル」の三つの模型教材を製作した。研究協力校に依頼し、実際に、その三つの模型教材を使った授業を展開したところ、生徒の理解が深まることが分かった。
〈キーワード〉  楕円描画、冷たい雨、火星の逆行現象、高校地学、理科総合B

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造形の基礎能力の育成による豊かな絵画表現-人物スケッチの学習を通して-

松本 潤子

小学校中学年以降の児童が望む豊かな表現には、自分の思いを託すことができる道具としての技能が必要になり、とりわけ「ものの見方」「形のとり方」の基礎能力は欠かすことができないと考える。この考えのもと本研究では、発達特性を考慮した上で第4学年を対象に選び、中学校美術科との関連からスケッチ学習を取り上げ、それを通して基礎能力を育てることにした。
実践では、絵画の中心的役割を担う“人物”を対象として一連の段階的スケッチ学習を行ったところ、描写力の向上とともに、意欲の高まりも認められ、スケッチ学習の有効性が検証された。
また、研究2年目においてはスケッチ学習のより良い在り方に中心を移し、授業実践を重ねた。その結果、テーマ作品の中でのスケッチの生かし方等、幾つかの課題が明らかにされた。
<キーワード>   造形の基礎能力、「ものの見方」、「形のとり方」、中学校美術科との関連、(人物)スケッチ学習、描写力の向上

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道徳的価値の自覚を深める道徳の時間に関する研究-「授業を通して高めたい姿」を明確にした授業づくり-

中荒江 朋子

道徳教育の充実が叫ばれている今、「道徳教育の目標、道徳の時間の目標等」を今一度理解し直すことは、道徳教育の充実に欠かすことができないことと考え、研究の出発点に位置付けた。そして、それを基盤とし、道徳の時間の特質である「道徳的価値の自覚を深める」ために、授業前の児童の実態を把握し、「授業を通して高めたい姿」を明確にして授業づくりに取り組んでいった。
その結果、児童の実態にあったねらいの設定、ねらいを達成するための効果的な指導過程の工夫へつなげることができた。更には、「授業を通して高めたい姿」から道徳の授業における評価の観点が明確になり、道徳的価値の自覚が深まっていったかどうかや授業後の児童の変容をとらえる手がかりにしていくことができた。
<キーワード>  道徳の時間、道徳的価値の自覚、授業を通して高めたい姿、道徳の評価

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健康で安全な生活を主体的に営む力の育成を目指した指導の工夫-実践的・体験的な学習を取り入れた授業づくり-

今澤 ひかり

高等学校家庭科「家庭基礎」において、健康で安全な生活を主体的に営む力を育成するために「健康・安全」の視点を重視した指導計画を作成し、実践的・体験的な学習を多く取り入れた教材および指導方法を検討し実践を行った。その結果、知識や技術の習得および意思決定能力や問題解決能力の育成に効果が見られ、学習で得たものを実際の生活に活用し、健康で安全な生活を営もうとする意識の高揚が図られた。
<キーワード> 健康、安全、実践的・体験的な学習、意思決定能力、問題解決能力